バセドウ病とは
甲状腺には、
脳下垂体から分泌される
甲状腺刺激ホルモン(TSH: Thyroid Stimulating Hormone)を受け取る受容体があります。
バセドウ病(Basedow Disease)は、何らかの免疫システムの異常により、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSH受容体)が敵とみなされ、
その結果、TSH受容体に対する抗体(TRAb)が作られTSH受容体が過剰に刺激されますので、
甲状腺ホルモンが過剰に生成されてしまう
甲状腺機能亢進症
の一つです。
本来、免疫システムは、体外から侵入したウイルスなどの外敵から身を守るために機能している体のシステムですが、
この免疫システムが、自己抗体を作ることにより自分の甲状腺刺激ホルモン受容体を攻撃してしまうという自己免疫疾患なのです。
バセドウ病以外に、自己免疫疾患の主な病気として、膠原病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などがあります。
自己免疫疾患の原因や発症メカニズムは、完全には解明されていませんが、
自己抗体を作ってしまう体質は、遺伝子によることが解明されています。
そして、この遺伝子を持つ人が、過労、妊娠、出産など、環境による何らかのストレスが過剰にかかった時、自己免疫疾患が発症すると言われています。
このため、パニック障害やうつ病などの精神疾患と同様、20歳代~30歳代の若い女性に多い傾向があります。
バセドウ病の症状
甲状腺ホルモンは、全身の代謝を促す機能を持っていますので、人が元気に生活して行くためには不可欠なホルモンです。
しかし、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、以下のようなさまざまな症状となって現れます。
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甲状腺(首の前部から側部)が腫れる。
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眼球の突出(バセドウ眼症)、あるいは目つきが鋭くなる。
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食欲は落ちていないのに体重が減る。
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心臓の鼓動が速くなる。
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動悸・息切れあるいは不整脈。
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のぼせや多汗。
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疲れやすく、体がだるい。
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口やのどが渇く。
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手や足が震える。
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イライラ感。
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集中力の低下。
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不眠。
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軟便・下痢。
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皮膚の黒色化。
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月経異常。
『元気の基』である甲状腺ホルモですが、これが過剰に分泌されることにより、
体が活発に機能しすぎた結果、疲れを感じたり体重が減ったりするというメカニズムです。
これらの症状の中には、
不安や恐怖による症状
と類似している部分があるため、心療内科やメンタルクリニックを受診すると精神疾患と誤診される可能性があります。
精神疾患と同様にストレスに起因する病気ですが、通常の精神疾患とは全く異なる治療が必要ですので、注意して下さい。
バセドウ病の治療方法・予防方法
バセドウ病の原因や発症メカニズムは完全には解明されていませんが、
以下の通り、いくつかの有効な治療方法があります。
- 薬物治療 ・・・
メルカゾール、
プロパジール、チウラジール、
などにより、甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑えることができます。
まれに、発疹、じん麻疹、皮膚のかゆみ、発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)、甲状腺の腫れ、筋肉痛や筋肉のつりなどの
副作用が出ることがあります。また、薬物治療で治らない場合もありますので、医師と相談しながら服用して下さい。
薬物治療は数年に渡りますが、この間にイライラ感が増せば、治療効果が低くなってしまいます。
- 手術による治療 ・・・
甲状腺の大部分を切除する手術です。全身麻酔をして手術をしますので、一時的に体への負担は大きくなりますが、
習熟した外科医が手術すれば、高い確率で早期に完治することができますので、大学病院などの総合病院で相談してください。
- 放射線 ・・・
放射性ヨード同位体のカプセルを服用するだけです。
服用したした放射性ヨード同位体、は胃腸で吸収されて甲状腺に集まり、放射線を出して甲状腺の細胞を潰します。
妊娠中や授乳中には放射線治療を受けることはできません。また、放射線治療後1年間は妊娠しないよう注意して下さい。
前述の通り、バセドウ病に代表される自己免疫疾患の原因は、自己抗体を作りやすい遺伝子を持つ人に、
ストレスが過剰に加わった時に発症すると言われています。
したがって、バセドウ病の予防法は様々な精神疾患の予防と同様、ストレスを溜め込まないことですので、
ストレスホルモンの分泌を抑制する方法を参考にして下さい。
最終更新日:2011年5月15日