更年期障害とは
卵巣機能の低下によりエストロゲン(女性ホルモンの一種)が減少すると、
視床下部や下垂体からは、性腺刺激ホルモン放出ホルモンや卵胞刺激ホルモンが大量に分泌し、
卵巣を刺激し、女性ホルモンの分泌を促します。
視床下部
には、女性ホルモンをコントロールする中枢があるだけでなく、自律神経系の中枢もあります。
視床下部が性腺刺激ホルモン放出ホルモンなどを分泌するように過激に働くと、自律神経への刺激も強くなります。
さらに、この時期には、子供達の独立など、環境や心的要因によるストレスが加わりがちです。
その結果、自律神経のバランスが崩れて、自律神経系に悪影響及ぼし、
更年期障害という症候群(一連の病的変化)として認識されるようになります。
更年期障害は交感神経と副交感神経のバランスの崩れが原因
このように、
更年期障害
(Postmenopausal Syndrome: PMS)とは、
視床下部や下垂体から分泌される女性ホルモン分泌信号の乱れによる、自律神経系の交感神経と副交感神経のバランスの崩れから来る症候群と言えます。
自律神経には、交感神経と副交感神経があり、血管や気管の収縮と拡張、血圧の上昇と下降、
胃腸・消化管の活動の抑制と促進など、お互いに相反する働きにより、各器官をコントロールしながら機能させています。
このため、交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、のぼせやほてり、発汗、動惇、息切れなど、さまざまな症状を起こすことになります。
日本女性の閉経年齢は、平均51歳近辺ですから、40代後半から50代前半にその症状を訴える女性が多いようです。
ただ、期間、症状および症状の程度には個人差が大きく、更年期障害がほとんど気にならない人もいれば、
仕事や家事など日常生活ができず、寝込むほど調子が悪くなる人もいます。
また、普段から不規則でストレスの多い生活をしている人や、栄養バランスが崩れた食事をしている人の中には、30代後半から更年期障害の症状が表れる人もいます。
女性に比べると男性は更年期障害になりにくい傾向がありますが、
これは、テストステロン(男性ホルモン)の減少が、エストロゲンの減少に比較して緩やかであるため、表面化しにくいことと、
女性と比較してストレスに強いためだと考えられます。
ただし、男性の場合も個人差が大きく、強い更年期障害の症状を訴える男性もいます。
更年期障害の症状
更年期障害の症状およびその程度には個人差がありますが、概ね以下のような症状の複合的な症状を訴える人が多いようです。
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のぼせ、あるいは ほてり(ホットフラッシュ)。
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冷え。
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肩こり・腰痛・背中の痛み。
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疲れやすく、体がだるい。
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頭痛・めまい・耳鳴り。
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憂鬱感。
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皮膚のかゆみや湿疹。
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手足のしびれや震え。
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判断力や集中力の低下。
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不眠。
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動悸や息切れ。
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口やのどが渇く。
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発汗。
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食欲不振・吐き気。
これらの症状の中には、
不安や恐怖による症状や、
パニック障害やうつ病の症状と類似しているため、心療内科やメンタルクリニックを受診すると精神疾患と誤診される可能性があります。
また、逆に内科などを受診すると、精神疾患を更年期障害と誤診されるケースもあるようですので、注意して下さい。
更年期障害の治療方法
症状が軽い場合はそのまま様子をみれば問題ない症候群です。
しかし、つらいと感じるようであれば症状が重い方ですので、クリニックなどで治療を受けることをお勧めします。
以下に示すホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy:HRT)により症状が緩和されますので、お近くの医師と相談して下さい。
ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy:HRT):飲み薬による方法
女性に対する飲み薬として、卵胞ホルモン薬である
プレマリン、
が古くから使用されてきました。黄体ホルモン薬を併用するのが基本となります。
プレマリンは、正式には骨粗鬆症には使用できませんが、骨量増加が認めらている唯一の女性ホルモン薬です。
まれに副作用として、乳房の張りや痛み、予定外の出血、吐き気などがありますが、一般的には数ヶ月程度で体が慣れ、軽くなります。
また、ホルモン補充療法を長期間の続けると、乳がんの発現リスクが多少高まる可能性がありますので、医師の指導の下服用してください。
ホルモン補充療法(HRT):貼り薬あるいは塗り薬による方法
エストラーナテープやフェミエストなどが使用されます。
毎日貼り替えるタイプ、週に数回貼り替えるタイプ、毎日塗布するタイプなどがありますので、用法を守ってご使用下さい。
どのタイプも下腹部、臀部あるいは大腿部に張ったり、塗布したりして使用します。
長期に続けることで骨粗鬆症の予防効果も期待できるようです。
飲み薬と同様の副作用が出ることもありますので、医師とよく相談してご使用下さい。
また、貼り薬特有の皮膚のかぶれも起こりますので、毎回貼る場所を変えるのが良いでしょう。
プラセンタによる治療
プラセンタエキスの注射薬『メルスモン』は、厚生労働省の認可を受けて40年以上経過し、その間、更年期障害の治療薬として利用され、
有効性と安全性が確認されてきました。
プラセンタは、ホルモンバランスを整える『内分泌調整機能』や、自律神経のバランスを整える『自律神経調整機能』があり、
このような機能が更年期障害の自律神経系の乱れに有効に作用すると考えられています。
また、プラセンタには、この他、基礎代謝の向上機能、血行の促進機能、造血機能など、様々な体質改善機能があり、
これらの機能も更年期障害の症状改善に貢献していると考えられます。
更年期障害の予防・緩和方法
40代後半から50代前半という時期は、子供たちも独立し、喪失感がつのり、うつ状態になる人もいます(エンプティネストシンドローム:空の巣症候群)。
前述の通り、更年期障害は、女性ホルモンの減少に加え、ストレスが引き金になります。
したがって、更年期障害の予防方法あるいは緩和方法は、様々な精神疾患の予防と同様、ストレスを溜め込まないことですので、
ストレスホルモンの分泌を抑制する方法を参考にして下さい。
また、以下のような生活習慣により、心だけではなく体の健康を維持しておくことも大切です。
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三食は栄養のバランスを考え、よく噛んで食べる。
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腹八分目を心がける。
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タバコや薬物の服用はしない。
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規則正しい生活を送る。
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生活を楽しみ、毎日笑う。
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日々おしゃれに気を使い、心身ともに若返る。
最終更新日:2011年7月26日