分子整合栄養医学の歴史
Orthomolecular(『分子整合論』あるいは『正常生体分子論』と訳されますが、本サイトでは分子整合論を使用します)は、
主な治療法として、栄養剤および生体の適正な構成要素を使用する方法を指して、
1968年にLinus Pauling 博士(1954年にノーベル化学賞を受賞)が命名しました。
日本でも、ここ10年程度、『分子整合論』をベースとする『分子整合栄養学(Orthomolecular Nutrition)』、『分子整合医学(Orthomolecular Medicine)』
あるいは『分子整合精神医学(Orthomolecular Psychiatry)』への注目度が高まってきましたが、
実は『分子整合論』が学会レベルで認められるようになるまでには、半世紀以上の長い年月がかかりました。
分子整合栄養医学の普及が遅れた理由
分子整合栄養医学の最大の特徴は、ビタミンやミネラルなどを、治療のために大量に投与する大量療法であり、
ビタミン大量療法はメガビタミンセラピー(Megavitamin Therapy)と呼ばれています。
『このような大量療法が本当に有効な治療法であれば、医師が推奨するはず』と誰もが思うでしょう。
分子整合栄養医学について医師の知識が乏しいという理由の一つとして、米国の医科大学において、分子整合栄養医学が完全に見落とされ、
教育カリキュラムに組み込まれて来なかったという歴史的経緯があります。
恐らく、教育資金の大手スポンサーが製薬会社であり、安価で有効な分子整合栄養医学が故意に除外された可能性は否定できないでしょう。
分子整合栄養医学の初期の研究は、1930年代~1950年代に行われましたが、医科大学のテキストに掲載されることはありませんでした。
以上のような理由で、米国において分子整合栄養医学の普及が遅れ、ほとんどの医師の分子整合栄養医学学に対する認識も低い時代が続きました。
米国でこのような状態ですから、日本で遅れたのはいわずもがなでしょう。
分子整合栄養医学はビタミンB3(ナイアシンおよびナイアシンアミド)の研究から始まった
ビタミンB3がナイアシン(Niacin:ニコチン酸とも呼ばれます)とナイアシンアミド(Niacinamide:ニコチン酸アミドとも呼ばれます)だと判明したのは1938年ですが、
その直後に分子整合栄養医学による治療が開始されました。
また、ナイアシンはペラグラ(Pellagra:ナイアシン欠乏による皮膚、消化器、神経などの疾患)の治療に有効であることも判明しました。
その後、様々な精神疾患に対して1 g(1000 mg)という多量のビタミンB3を投与する治療を臨床栄養士が開始しました。
そして1950年までに、うつ病、老衰、重度の精神病がビタミンB3の投与により改善されたといういくつかの報告がなされました。
1949年に出版された W. Kaufman 博士の書籍には、数百人の関節炎患者にナイアシンアミドを投与する試験が報告されました。
ほとんどの関節炎患者が、元の状態に戻るか、あるいは元の状態より改善し、重度の関節炎患者もハンディキャップから開放され、
関節の機能障害が、ナイアシンアミド欠乏症(Aniacinamidosis)であることが示されました。
最近の数十年間に、内科的な治療よりも分子整合栄養医学への注目が高まり、
ナイアシン(ビタミンB3)のビタミン大量療法による精神分裂症の治療など、応用例も多数報告されるようになりました。
また、ナイアシンは、HDL(善玉コレステロール:High-Density Lipoprotein Cholesterol)を増やし、
LDL(悪玉コレステロール:Low-Density Lipoprotein Cholesterol)と中性脂肪 (Triglyceride)を減らす効果もあることがわかりました。
以上のように、分子整合栄養医学の歴史は古く、様々な成果をあげてきたにも関わらず、医師や一般の方々の認識度は、まだまだ低い状態にあります。
最終更新日:2011年6月12日