皮膚の構造と機能
肌の表面をよく観察すると、多数の細かい皮溝(sulcus cutis)と呼ばれる溝があり、
ある程度規則正しく三角あるいは四角のれ盛上がった皮丘(crista cutis)を形成していることがわかります。
この皮溝や皮丘の規則正しさや細かさは、肌の外観に大きく影響し、肌の「キメ」と呼ばれています。
キメの細かい肌とは、皮溝が細かく規則正しく並んでいて、皮丘も細かく整っていて弾力的ですので、若々しくまた美しく見えます。
これに反し、キメの荒い肌とは、皮溝が深く不規則に走り、皮丘も弾力を失い、年老いた肌に見えます。
本サイトのテーマは、如何にキメの細かい美肌を作り、そして維持するかということですが、
その前に、構造と機能をしることは非常に重要です。
本ページでは、皮膚の構造とその機能について、細かく見てみましょう。
皮膚の構造は下図に示す通り、大きく分けると、外側から表皮、真皮、皮下組織の3層に分けられます。
3層の皮膚組織により、身体の内部を様々な外部環境から保護すると共に、水分が体外に逃げないよう守っています。
以下、各層の構造と機能を細かく見て行きましょう。
表皮の構造と機能 -
肌のターンオーバーによりシミ・ソバカスを排除
表皮は、厚み 0.2mm 程度の薄い層で、内側から基底層、
有棘層
、
顆粒層、角質層、に分類されます。。
表皮には毛細血管はなく、真皮から栄養を補給することにより、細胞分裂を繰り返し、角質部分は、やがて剥がれ落ちます。
基底層の細胞が、徐々に変化しながら、約14日間かけて角質層に達すると、美しい肌を守ってくれる強くてたくましい細胞へと変化します。
基底層の構造と機能
基底層は、表皮の最内層に位置し、ケラチノサイト細胞、メラノサイト細胞、ランゲルハンス細胞で構成されており、
それぞれ、以下のような機能があります。
- ケラチノサイト細胞 ・・・
基底層を構成する細胞の中で、最も多い細胞であり、細胞分裂することにより新しい細胞を作り出し、
その一部はその外層にある
有棘層
に移動し、有棘細胞と呼ばれるようになります。
- メラノサイト細胞 ・・・
メラニン細胞とも呼ばれ、必要に応じてメラニン色素を作り、ケラチノサイト細胞に配分します。
- ランゲルハンス細胞 ・・・
樹枝状の突起があり、皮膚の免疫を司るレセプター(受容体)を持ち、外部から侵入する細菌やウイルス、化学物質、放射線、紫外線などの刺激情報や、
皮膚内部の状況を常に脳へ伝達し皮膚の均衡を保つセンサーの役目を担っています。
有棘層
の構造と機能
棘
の形をした細胞間橋で細胞同士が強固につながっていますので、有棘層と呼び、この細胞を有棘細胞と呼びます
有棘層は表皮の中で最も厚い層で、有棘細胞が細胞間橋でしっかりと結びつくことにより丈夫な皮膚を維持しています。
有棘細胞では、角質細胞の素となるケラチンと呼ばれるタンパク質を作りながら顆粒層に向かって移動します。
ケラチンは髪の主成分でもあり、
健康な美髪の作り方のページで説明しましたので、参考にして下さい。
有棘層の上層まで来た有棘細胞は、水分を失い、つぶれて扁平な形をした顆粒細胞になり、顆粒層に移動します。
顆粒層の構造と機能
この層の細胞内には、ケラチン線維とフィラグリンからケラトヒアリン顆粒と呼ばれる小さな粒が作られることから顆粒細胞と呼ばれます。
顆粒細胞がケラトヒアリン顆粒を持つことにより、本来、肌のもつ多くの機能が得られます。
その一つが、紫外線を跳ね返す機能です。
また、ケラトヒアリン顆粒が角質層に移動すると、保湿に重要な NMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)に変わります。
さらに、顆粒細胞は、スフィンゴ脂質からできた層板顆粒といわれる小さな粒も作ります。
このスフィンゴ脂質は、特殊な脂質で出来ていて、将来は角質層の細胞間脂質(セラミド)の素となります。
角質層の構造と機能
表皮の最も外側にある角質層は、その下層の顆粒層から移動してくる際に核(遺伝子:DNA)、ミトコンドリアなど細胞内の組織が無くなり、ケラチン線維のみになります。
ケラチン線維で出来たレンガ状の角質細胞は、細胞間脂質(セラミド)が接着剤の役割を果たすことにより、つなぎ合わされています。
角質層の上層に達した角質細胞は、やがて剥がれ落ちていきますが、このサイクルを『角化』と呼びます。
ケラトヒアリン顆粒に含まれるタンパク質が分解され NMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)に変わりますが、
角質層内で NMF が不足すると、角質層内の保湿が維持されないため、硬くてカサカサした角質層になります。
また、角質層の表面は、皮脂腺や汗腺などから分泌された皮脂膜に覆われていますが、健康な状態では皮脂膜は酸性になっています。
酸性の皮脂膜がバクテリアなどの菌の増殖を抑えることにより、我々を感染から守ってくれているのです。
真皮の構造と機能 - 光老化による
皮膚粗鬆症
に注意
真皮は、表皮の基底層の下にある約 2mm の厚みの層です。
真皮は、 70% を占めるコラーゲンと呼ばれる線維と、26~28% 程度を占める基質、そして2~4% 程度を占めるのエラスチンと呼ばれる線維で構成されています。
コラーゲンとエラスチンは、肌のハリや弾力性を保つ役割を担っています。
コラーゲン線維は、基質の中を縦横無尽に渡された
梁
(構造物の骨組み)のようなもので、肌の構造を支えて、肌にハリを与えてくれます。
そしいて、エラスチンは、コラーゲン線維にコイル状に巻き付いて梁を強化する機能を持っていますので、肌の弾力性をより一層高めてくれています。
コラーゲン線維とエラスチン線維の間を充たしている基質は、ムコ多糖類(ヒアルロン酸)とタンパク質が結合したプロテオグリカンと呼ばれる成分からなり、ゼリー状になっています。
このため、真皮中の水分のほとんどが基質にあります。
そして、真皮の中で、コラーゲン線維とエラスチン線維、基質を作り出しているのが、線維芽細胞と言われる細胞です。
この線維芽細胞は、紫外線に弱く、紫外線でダメージを受けると、正常に真皮を製造できなくなり、シワの原因になります。
これを光老化と言い、紫外線によりコラーゲンやエラスチンの生成が阻害され、真皮がぼろぼろの状態になりシワが多数できた状態を
『
皮膚粗鬆症
』
と呼びます。
ここで、粗鬆とは『大ざっぱであらいこと』を意味します。
『骨粗鬆症』は良く知られていますが、『皮膚粗鬆症』という言葉はまだあまり知られていません。
『皮膚粗鬆症』は、美肌を目指す方にとって大敵ですので、ぜひ対策方法を学んで下さい。
真皮内には毛細血管が通っていて、栄養と酸素が供給されています。
また、真皮には表皮に食い込むように突き出た乳頭層があり、表皮としっかりと接合されていますが、この乳頭層にはコラーゲン線維が特に集中しています。
皮下組織の構造と機能
真皮の下層にある皮下組織は、皮下脂肪が蓄えられており、その厚みは、身体の部位、年齢、性別、肥満度によってかなりの違いがあります。
皮下脂肪は、エネルギーを蓄えるための貯蔵庫的な機能を果たしています。
この機能は、食料を定期的に摂取できなかった狩猟時代には重要な機能でした。
また、皮下組織は、外部からの衝撃を吸収するクッションの役割も持ち、熱を伝えにくい脂肪の特性により、体温の調整にも貢献しています。
最終更新日:2011年7月22日