不安・恐怖をやわらげる
不安障害やうつ病などの心の病を抱える方は、
不安感を持てば、不安な思考が誘発され、そしてこの不安な思考が、さらに不安感を増長してしまうという危険なサイクルから抜け出せなくなってしまいます。
しかし、あなたが勇気を持って適切な態度を取れば、このような危険なサイクルから抜け出すことが可能です。
ここでは、あなたが、不安や恐怖にどのような態度で立ち向かえば良いか考えてみましょう。
惨事が起こるメカニズム・確率について論理的に考える
心の病を抱える方は、あなたやあなやの愛する人に、惨事が起こるんじゃないかと不安でたまらず、何度も何度も同じ心配をしてしまします。
惨事に注意が向けば向くほど、この惨事がすぐに起こるんじゃないかと信じるようになり、不安も高まります。
そして、
安全行動に打ち勝つ
で述べたとおり、惨事が発生する可能性および危険性の過大評価と、それを乗り越えるあなたの能力の過小評価が起こります。
しかし、科学的に論理的に考えてみてください。
まず、惨事が発生するメカニズムがわかれば、こういう場合には惨事は発生しないと断言できますので、恐怖はやわらぐでしょう。
また、ほとんどの場合において、惨事が発生する可能性はかなり低い確率ですし、
仮に惨事が起こった場合には、周囲の人々あるいはレスキューの方々があなたを助けてくれます。
そして、あなた自身も、周囲の力を借りて、この惨事を乗り越える力を持っていることを認識してください。
例えば、2011年3月11日に発生した、マグニチュード9.0の東北地方太平洋地震の後、
掲示板への書き込みを拝見していると、余震が来るたびに『今度は死んでしまうのではないか』と不安に怯える方が増えているようです。
しかし、ここは、事実に基づき論理的に、以下のように考えましょう。
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東北地方太平洋地震は、長さ約450km、幅約200kmに渡って、最大20~30m程度の断層が、
宮城県沖から福島県・茨城県沖に渡って広範囲にすべることにより発生したものです
(「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第28報):気象庁)。
これより、長期間(1,000年程度)に渡り、広範囲に蓄えられたひずみエネルギーが、すべることにより一気に放出されたのです。
そして、すべり摩擦係数は静止摩擦係数よりはるかに小さいですので、中途半端にひずみエネルギーが残っている可能性は殆どありません。
したがって、これより大きな大地震が発生する可能性は限りなくゼロに近いと言えます。
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ニュージーランドのクライストチャーチでは、余震により建物が倒壊したという事実がありますので、余震による建物崩壊という恐怖をもたれる方もいらっしゃると思います。
しかし、日本の場合、1981年に建築基準法が改正され、これより後に建築された建造物は大地震でも安全性が高いとされています。
したがって、1982年以降の建物内にいる限りは、建物自体が崩れる心配はありませんので、落下物にさえ注意しておけば安心できると結論付けられます。
また、それ以前の建物でも、耐震補強されていれば安心できます。
極端な思考を避ける
ある物事に対して、正体不明の恐怖を抱くと、
「怖い」という
ラベル付け思考をしてしまいます。
そして、
破局思考に陥りがちになります。
極端な思考は、極端な感情的行動を引き起こしてしまします。
物事を、事実に基づいて、多角的に、できるだけ良い方向で考えるよう努めましょう。
不安に基づく思考を抑制しない
あなたが強い不安を感じたとき、これに基づく不快な思考を抑制しようとする安全行動を取る方もいるでしょう。
しかし、思考の抑制は、逆効果です。思考を抑制しようとすればするほど、頻繁に頭をよぎるようになります。
不快な思考をそのまま受け入れるという方法に対して、不快な思考を抑制するという方法を取った場合、
不快な思考は、約2倍、頻繁に頭をよぎるようになるという実験結果があります。
あなたも実験してみましょう。
まず、ソフトバンクのコマーシャルのお父さん役である『白い犬』を思い浮かべてください。
そして、一分間、目を閉じて『白い犬』をあなたの思考から強引に消し去ってみてください。
どうでしょう、消そうとすれば消そうとするほど『白い犬』が頭をよぎりませんでしたか?
強引に思考を抑制することが如何に難しいか、お解かり頂けたと思います。
不安や恐怖が体と心の感覚に及ぼす変化を知る
健常者は『心配するな。たかが不安だろ。』と言うかもしれません。
しかし、心の病を抱える方にとっては、この不安こそが、体と心の強烈な感覚の変化を伴う重大な体験なのです。
したがって、不安による感覚の変化を正しく認識しておかなければ、
吐き気やめまいを肉体的な病気の前兆と勘違いしたり、発狂するかもしれないと思い込んだりする場合もあります。
不安や恐怖により引き起こされる心と体の感覚の変化は概ね以下の通りです。
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集中できない。
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思考の空回り。
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周囲を敬遠したり、非現実的に見えたりする。
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頭がふらふらする。めまいがする。吐き気を催す。
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口が渇く。
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肩こり・首こり。
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心臓の鼓動が速くなる。
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わきの下が暑いあるいは汗をかく。
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胸が苦しい。息苦しい。呼吸が速くなる。
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手が震える・手のひらが汗ばむ。
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緊張してドキドキする。
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頻尿。
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足がふらふらする・よろめく・ふわふわする。
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足の指先のヒリヒリ感・チクチク感・しびれ。
このような症状を覚えたら、不安から来ている症状の可能性がありますので、
タスク集中トレーニングや
あるがまま瞑想
を試してみてください。また、信頼する主治医を尋ねてみると不安を和らげるヒントが得られるかも知れません。
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あなたは、不安や恐怖を『耐えられない』とか『我慢できない』と思うかも知れませんが、
得体の知れない物に対して不安や恐怖を抱くのは誰でも同じです。
耐えるのはつらいでしょうが、決して『耐えられない』ものではないことを理解してください。
あなたの心の病を予防あるいは治療するためには、
不安・恐怖に勝つ必要があるのですから。
最終更新日:2011年4月12日