強要思考とは
信念や信条の中で、『~ねばならない』、『~べきである』、あるいは『~べきではない』という言葉は、極端で厳格であるため、しばしば問題を起こします。
強要思考とは、あなたのこのような融通のきかない信念や信条に基づく思考を意味します。
世の中の多くの方は、現実に適応して行くため、柔軟な思考を持っています。
強要思考の典型的な例を考えてみましょう。
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東北関東大震災により、支援物資が届かず、多くの方々が避難所で大変不便な生活を強いられています。このような情報を聞いて、あなたならどう考えるでしょうか?
『困っている人は助けねばならない』という信条を持つ強要思考の方なら、何かをしようとしますが、何もできない自分に失望し落ち込んでしまいます。
中には、個人的に現地へ物資を運ぼうとする方がいるかも知れませんが、焼け石に水であるばかりか、ガソリン不足で身動きが取れなくなったり、
レスキュー隊に負担をかけたりという事態に陥るかもしれません。
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あなたは、友達や見ず知らずの人に親切にするよう心がけていると思います。
しかし、友達や見ず知らずの人から期待した助けが得られなかった場合、あなたならどう考えるでしょうか?
『人には親切で思いやりのある行動をとるべきだ』という強要思考の方は、このような場合、傷つき落ち込んでしまいます。
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会社や自治体の会議で、あなたの親しい友人あるいは同僚が、ある発言をした場合、あなたならどう考えるでしょうか?
『親しい友人は賛成しなければならない』あるいは『親しい友人は助けなければならない』という信条を持つ強要思考の方なら、
何とか助けようと過半数の承認を得ようと努力するでしょう。
たとえ、この発言が自分の意見と食い違っていても、自分の信条に基づき自分を犠牲にしてまで大変な努力をすることになります。
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また、会社や自治体の会合において、『人を傷つけてはいけない』という強要思考の方は、自分の主張により誰かが傷つくのを恐れるあまり、強い主張ができなくなります。
そして、会合の後にはいつもストレスが溜まり、落ち込んでしまいます。
強要思考の阻止方法
強要思考の方は、世間の殆どの方が取っているように、思考に柔軟性を持たせる必要があります。
以下のようなテクニックにより、あなたの思考に柔軟性を持たせる努力をするのが良いでしょう。
- 信念・信条に柔軟性を持たせる・・・
『~ねばならない』、『~べきである』あるいは『~べきではない』』というあなたの信条を、『~の方が良い』、『~したい』あるいは『~しない方が良い』
という言葉で置き換え、信念・信条に柔軟性を持たせることにより、気持ちに余裕が出て、良いアイデアも出て来るようになります。
東北関東大震災のケースでは、レスキューの素人である個人が直接的に動いても返って迷惑をかける可能性が高いので、
義捐金や物資を支援したり、『1家族なら妊婦や子供を受け入れられる』と自治体に申し出ることにより自治体を動かしたり、
買占めや外出を避け、節電・節エネルギーをすることにより現地に物資やエネルギーが回るように配慮するという間接的な貢献をするのがベストな選択ではないでしょうか?
ボランティアで直接的な貢献をしたいと言う方は、個人的に動くのではなく、専門の団体に登録して動くのが良いでしょう。
- 『人それぞれ異なるルールに基づいて動いている』ことを認識し、許容する・・・
他人に対し親切にするケースでは、人それぞれ異なるルールに基づいて動いていますので、あなたの親切で思いやりのある行為と同程度の親切を、
常にあなたが他人から受けられるとは限りません。
『人それぞれ異なるルールに基づいて動いている』ことを認識し、これを許容できれば、あなたはそれほど傷つかず、落ち込むこともないでしょう。
- 理想と現実との溝が埋められるよう信念や信条を抑制する・・・
『~ねばならない』という自分の信念を押し通して落ち込んだり怒ったりするより、
あなたが何をどうしたいのかということに矛盾しない範囲で行動するよう心がける方が、楽しく幸せな人生を過ごせることを認識してください。
余談になりますが、自分の危険もいとわずボランティアで活動するという行為は、
ドーパミンの分泌と、それが作用するニューロンの受容体が関係していると考えられています。
『ボランティアで助けるべきだ』と思うと、
下位脳幹にある中脳でドーパミンが生成され、
これが
側坐核を刺激して『やる気』を引き起こします。
そして、
背側線条体や
前頭連合野において、
扁桃体が作り出す不安や恐怖という感情よりも、
『やる気』が上回ると判断されれば行動を起こす、というメカニズムです。
このドーパミンによる報酬反応は、若者が『目新しさ』を求める行為と同じメカニズムであり、特に青年期の男性に強く現れますが、
ストレスによって、あるいは成長するにしたがって弱まります。
『人それぞれ異なるルールに基づいて動いている』というメカニズムの一部は、脳科学でも解明されている事実ですので、是非、認識し、許容してください。