睡眠の重要な役割の一つに、『記憶の固定』があります。
あなたが経験した出来事は、海馬に記憶されていますが、この記憶は、数週間から数ヶ月かけて睡眠中に、徐々に大脳皮質へ移されることにより、長期記憶となります。
しかし、睡眠が妨げられると、この『記憶の固定』が遅れてしまいます。
また、睡眠が妨げられると、グルココルチコイドと呼ばれるストレスホルモンが分泌されます。
そして、
ストレスが脳に及ぼす影響で述べた通り、
過剰なストレスは、脳に重大なダメージを与えます。
不安障害やうつ病を抱える方の多くが、同時に睡眠障害にも陥っています。
これは、睡眠障害がストレスを増長させ、そしてストレスが睡眠障害を増長し、最終的に心の病へ発展したものと考えられるでしょう。
したがって、睡眠障害を克服することは、心の病を治療する第一歩と考えて良いでしょう。
最適な睡眠時間は個人により異なりますが、
100万人以上を対象に行われた米国の研究では 6.5~7.5時間 の睡眠をとっている人が最も死亡率が低いという結果が出ています。
睡眠において重要なことは、あなたがすっきり目覚めて、日中に眠気を感じず、仕事や学習に専念できるということです。
あなたの睡眠を助ける習慣として以下の項目が挙げられます。
熟睡できるよう、あなたの週間を見直してみてはいかがでしょうか・
1. 朝日を浴びて体内時計をリセットする
体内時計のメカニズムで述べた通り、
人間は体内時計を持っており、この体内時計の長さは人により異なります。そして、この体内時計は、目から入る強い光によってのみリセットされます。
したがって、毎朝規則的に起床し、太陽の光を浴びて体内時計をリセットすることが大切です。
そして、朝日を浴びれば、約14時間後には、メラトニン濃度が上がり、自然に眠気を感じるようになります。
曇りの日でも、屋外の照度(明るさ)は、蛍光灯の光に比較して、かなり強いですので、曇りの日でも自然光を浴びるよう心がけましょう。
また、夜中に目が覚めてしまった時、照明の光が目に入らないよう、寝室の照明は消すよう心がけましょう。
2. 適度な運動をする
ある程度の時間、運動を続けると、エンドルフィン(endorphin)という神経伝達物質が分泌されることが知られています。
エンドルフィンは、モルヒネよりも強力な鎮痛作用、鎮静作用、免疫系の活性化、多幸感をもたらすなど、様々な効果があります。
したがって、睡眠時刻より3~5時間程度前の、夕方から夜にかけて適度な(30分以上の)運動をすると、
睡眠時にリラックスでき、ストレスが緩和し、穏やかになれますので、あなたの熟睡を助けてくれるでしょう。
また、性行為によってもβ-エンドルフィンが分泌されることが知られていますので、同様の効果が期待されます。
3. ストレスホルモンの分泌を抑制する
運動はストレスホルモンの分泌も抑制しますが、その他にもストレスホルモンの分泌を抑制する方法があります。
ストレスホルモンの分泌を抑制する方法
に述べた方法でストレスホルモンの分泌を抑制することにより、あなたの快適な睡眠を助けてくれるでしょう。
4. リズムを確立する・昼寝は15分程度
毎日、同じようなリズムで行動できるよう、起床・運動・食事・就寝などのスケジュールを確立しましょう。
どうしても昼間の一定時刻に眠気に襲われるようでしたら、15分程度の短い昼寝を取りましょう。
理想の昼寝の取り方は、
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15分後に確実に目覚めるようアラームをセットします。
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部屋を薄暗くします。
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ベッドに横たわるのではなく、ソファにもたれかかる程度に上体を起こし、足は伸ばします。
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昼寝の直前にカフェイン入りのドリンクを飲むのも良いでしょう(カフェインは飲んだ後20分経過してから効果を発揮します)。
- 目覚めた後には太陽の光をしっかり浴びます。
昼寝には午後の集中力を高める効果もありますので、積極的に昼寝を利用するのも良いでしょう。
長い昼寝を取ると、熟睡モードに入ってしまい、覚醒後に脳が活動開始するまでに時間がかかるばかりではなく、
夜の睡眠にも影響を与えてしまいますので、気をつけましょう。
5. 目を覚ましたままベッドに10分以上横たわらない
・・・
睡眠障害の方は、ベッド(または布団)に入って寝ようと努力しますが、なかなか寝付けませんので、悶々とベッドの中で過ごしてしまいます。
このような場合は、無理に寝ようとせず、眠くなるまで、洗濯物を整理したり、比較的軽い内容の本などを読んだり、というような退屈な作業をしましょう。
カフェインを含まないホットミルクやココアを飲むのも良いでしょう。
そして、眠くなった時にベッドに入りましょう。
夜中に目が覚めてしまった時も同様に試してみましょう。
6. カフェインや刺激物の摂取を見直す
・・・
午後3時あるいは4時以降、カフェインや刺激物を含む飲料や食料を摂取すると、就寝時間になってもあなたに眠気を感じさせません。
たとえ少量であっても、あなたの睡眠に影響を及ぼす可能性がありますので、成分表を調べて、カフェインや刺激物を摂取しないよう注意しましょう。
7. 就寝前の行動を習慣化する
・・・
就寝前に取る行動を習慣化させておくと、あなたの心が就寝を意識して、眠気を催しやすくなります。
例えば、暖かい風呂に入る、心をリラックスさせるラジオや音楽を聞く、胃に負担をかけず刺激物を含まない飲み物を飲むなど、
あなたの好みに合わせて調整してください。
8. 睡眠に対する先入観を捨て、睡眠障害を克服できるという態度を取る
・・・
睡眠障害に陥った方は、「また今日も眠れないんじゃないか?」、あるいは「きょうも夜中に目が覚めるかも?」という考えが頭に浮かぶかも知れません。
しかし、そのような考え方自体が、あなたの睡眠障害を長引かせてしまいます。
このような考えを持ったり、無理に寝ようと努力すること自体が、あなた自身をリラックさせず、睡眠から遠ざけていることに気づいてください。
そして今日、自分は睡眠障害を克服して、熟睡できるんだという態度を取ることが重要です。
また、朝の光を遮断できるよう遮光性の高いカーテンを使用し、肌に接触する布団カバーには、肌触りがよく吸汗性・透湿性の良い綿または麻を使用するのが良いでしょう。
敷布団またはベッドは硬すぎず、体が沈みこまない程度の適度な硬さを持ち、掛け布団は肩が凝らないよう軽い羽毛布団がお勧めです。
さらに、快眠を得るために枕は重要であり、簡単に寝返りを打てるかが適した枕のポイントになります。
寝返りを打っても頭が落ちないよう十分幅が広く、寝返りを打ちやすくするため、横向きに寝て顔が水平になる程度の高さが理想です。
個人差がありますので、自分にフィットした枕をいろいろ試してみるのが良いでしょう。