ナイアシン(ビタミンB3)の概要
ナイアシン(Niacin)およびナイアシンアミド(Niacinamide)は、有害なニコチン(Nicotin)に構造が良く似ていたため、
ニコチン酸あるいはニコチン酸アミドと呼ばれ、長年研究対象から除外されてきましたが、
ニコチンとは全く異なる機能を持っています。
その後、ペラグラ(Pellagra:皮膚、消化器、神経の疾患)がナイアシンの欠乏症であることが解明され、
その治療にナイアシンあるいはナイアシンアミドが使用されたことから、ナイアシンが注目されるようになりました。
現在でもニコチン酸あるいはニコチン酸アミドと呼ばれることもありますが、
正式には、ナイアシンあるいはナイアシンアミドと改名されています。
ナイアシン(ビタミンB3)の効果
ナイアシンは、人間の消化器系、皮膚、そして神経の健康には不可欠な栄養素です。
ナイアシンの効果により消化が促進され、我々は炭水化物からエネルギーを取得することが可能になります。
また、DNA(Deoxyribonucleic Acid:デオキシリボ核酸)やRNA(Ribonucleic Acid:リボ核酸)は、遺伝情報を保ち、その情報を発現させる重要な機能を担っていますが、
ナイアシンおよびナイアシンアミドは共に、DNA や RNA を構成しているヌクレオチド(Nucleotid)の構成要素です。
このため、ナイアシンおよびナイアシンアミドは、体内でDNAを修復したり、性ホルモンを製造するという重要な機能も担っています。
このため、ナイアシンが不足すると、ペラグラや総合失調症など、重大な病気になる可能性が出てきます。
1955年に、ナイアシンには、コレステロール(Cholesterol)、特に、LDL(Low-Density Cholesterol)を下げ、
その結果、中性脂肪(Triglycerides)も下げることがわかり、高脂血症(Hyperlipidemia)の治療法として注目されました
(この機能はナイアシンアミドにはないようです)。
その後、ナイアシンには、血液中のコレステロールレベルを適度なレベルに調整してくれるという、すばらしい機能があることがわかりました。
高すぎても、低すぎても問題になるコレステロールレベルですが、これをナイアシンがちょうど良い状態に維持してくれます。
ここで、LDL は、細胞内に取り込まれなかった余剰なコレステロールを血液中に放置し、動脈硬化を引き起こす原因を作りますので、
俗に『悪玉コレステロール』と呼ばれます。
一方、HDL(High-Density Cholesterol) は、血液中の余ったコレステロールを回収し、肝臓に運ぶ働きをするので、俗に『善玉コレステロール』と呼ばれます。
特に、心血管疾患(cardiovascular disease)には、『善玉コレステロール』が重要ですが、
ナイアシンは全てのコレステロールが正常になるよう調整してくれます。
ナイアシン(ビタミンB3)を多く含む食品
ナイアシンを多く含む主な食品は、以下の通りです。
ここで、表示した重量(mg)は、食材 100 g 当たりのナイアシンの含有量です
(
食品成分表:分子整合医学(Orthomolecular Medicine)関連[3])。
-
無精白の穀物 ・・・ 玄米(6.3 mg)、玄殻こむぎ(6.3 mg)、玄殻とうもろこし(2.0 mg)。
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豆類 ・・・ 大豆(乾燥:2.2 mg)、小豆(乾燥:2.2 mg)、枝豆(生:1.6 mg)。
-
種実類 ・・・ ピーナッツ(17.0 mg)、アーモンド(3.5 mg)、かぼちゃ(4.4 mg)、ゴマ(5.3 mg)。
-
魚類 ・・・ かつお(19.0 mg)、いわし(8.2 mg)、まあじ(生:5.4 mg)。
-
肉類 ・・・ 牛赤身(4.3~6.6 mg)、牛レバー(13.5 mg)、豚赤身(5.3~8.6 mg)、豚レバー(14.0 mg)、鳥むね肉(8.4 mg)、鳥レバー(4.5 mg)。
穀類のナイアシンの殆どは、殻や胚に含まれています。
このため、精白した穀類のナイアシンは、精白米(1.2 mg)、1等薄力粉(0.7 mg)、コーンフレーク(0.3 mg)
という具合に、原料と比較して大幅に減少してしまいます。
1942年以前に、米国を含め様々な国でペラグラ(Pellagra)が流行したのは、この穀物の精白が主な原因でした。
ナイアシン(ビタミンB3)の副作用
サプリメントは必要なの?
の表1に示す通り、
日本の基準では、ナイアシンの耐容上限量は、成人男性で 80 mg、成人女性では 65 mg、
またナイアシンアミドの耐容上限量は、
成人男性で 300 mg、成人女性では 250 mg と定められています。
一方米国ではナイアシンの上限摂取量は 35 mg と低く定められています。
一方、分子整合栄養医学の最適健康必要量は、300 mg とされています。
ナイアシンの多量摂取は、以下のような副作用を起こす可能性が指摘されています
(
分子整合医学(Orthomolecular Medicine)関連[1])。
病気を予防するために、ナイアシンの耐容上限量を守りながら摂取する場合には全く問題はありませんが、
耐容上限量を超えて治療目的で摂取する場合は、医師の指導の下で摂取するよう心がけましょう。
- ほてり(Flush) ・・・
顔などが紅潮する。これは、血管拡張作用のあるヒスタミン(histamine)が急激に分泌されるためだと考えられています。
- 吐き気あるいは嘔吐 ・・・
ナイアシンを大量摂取後、数日遅れて吐き気を催し、そそまま量を減らさず飲み続けると、嘔吐して脱水症状を招くこともあります。
吐き気を感じる場合は、摂取量を減らすか、ナイアシンからナイアシンアミドに変更するなどの処置が望ましいようです。
- 頭痛 ・・・
まれにヒスタミンの多量分泌により頭痛が起こることがありますが、
殆どの場合、それほどひどくはなく、軽い鎮痛剤で直る程度のものです。
ごくまれに、ナイアシンからナイアシンアミドに変更する必要がある場合もあります。
- 胃液の多量分泌 ・・・
まれにヒスタミンの分泌により胃液の多量分泌が起こり、胃がムカムカしたり、胃痛を感じることがあります。
- 耐糖性(Sugar Tolerance)の減退 ・・・
ナイアシンは、糖尿病の治療にも使用されますが、
ごくまれに、耐糖性の減退のため、ナイアシンの投与を中断しなければならない場合も発生したようです。
ナイアシンアミドの場合は、耐糖性の減退はありません。
- 皮膚障害(skin Lesions) ・・・
特に総合失調症の治療において、ナイアシンアミドの多量投与では皮膚の色素沈着(dark pigmentation of skin)は起こりませんが、
ナイアシンではごくまれに皮膚の色素沈着が起こることがあります。
この色素沈着は、かゆみなどの症状はありませんが、数ヶ月遅れて発生することがあります。
- 肝臓の問題(liver problem) ・・・
アルコール中毒患者の中には、ごくまれに、ナイアシンの多量投与により黄疸(おうだん)になることがあります。
しかし、ナイアシンの投与を一旦中断し黄疸が回復した後に、黄疸を再発させることなく、ナイアシンの多量投与を再度続けられた患者もいます。