ビタミンE の概要

   ビタミンE は、1992年に、Dr. H. M. Evans と Dr. K.S. Bishop により発見されました。 その当時、ビタミンE は、胎児が、腐りかけのラードの吸収を阻止する物質という認識であり、彼らはトコフェロール(Tocopherol)と呼びました。 ギリシャ語で、トコとは『出産(tocos)』、フェロールとは『生まれ出る(phero)』という意味で、 動物の出産以外にはあまり重要な栄養素ではないと考えらてきました。
1936年に、Dr. H. M. Evans らは、小麦胚芽油(wheat germ oil)からα-トコフェロールの分離に成功し、その後、トコフェロールは狭心症の症状緩和に使用されました。 また、産科医の Dr. P. V. Moller は、小麦胚芽油のビタミンE により、数百人に及ぶ習慣性流産の治療を行い、約80%という高い成功率を達成しました。 その後、Dr. E.V. Shuteら(1948年)が冠動脈やその周辺の血管疾患の治療に、ビタミンE を使用したのをきっかけに、 様々な疾患の治療に使用され、ビタミンE が重要な栄養素であることが認識されるようになりました。

ビタミンE の単位

   ビタミンE にはメチル基の位置によって8つの異なる型があり、人に対するビタミンE の効果も型によって異なります。 その中で、D-α-トコフェロールが、人には最も強い活性を持っており、1 mg が 1.49 IU(International Unit:国際単位)に相当します。 ここで、 IU とは、薬理学の国際単位で、物質が人体に対してどの程度活性かを表す指標です。 また、D-α-トコフェロールが最も一般的なビタミンE ですので、多くのサプリメントでは、重量と国際単位の換算にはこの値が使用されます。
しかし、ビタミンE は空気に触れると不安定になるため、酢酸塩(エステート:Acetate)などの形で提供される場合もあります。 例えば、酢酸 DL-α-トコフェロールであれば、1mg が 1 IU に相当します。
このように、提供されるビタミンE の型や化合物の形により効果が異なりますので、重量を用いるとわかりにくくなります。 このため、ビタミンE としての人への効果を表す場合には、単位として IU を使用します。

ビタミンE の効果

   ビタミンE は脂溶性で、体の主な抗酸化剤(Antioxidants)として機能し、ビタミンA やリン脂質(Phospholipid)を守ります。 そして、内分泌腺(endocrine)、筋肉、および末梢血管系(peripheral vascular system)の発育および機能維持にはビタミンE が必要です。 このため、長期に渡ってビタミンE の欠乏状態が続くと、死に至るほど重大な病気に陥ります。
   米国では、1968年に初めて、健康な成人に対するビタミンE のRDA(Recommended Dietary Allowances:推奨摂取量)が30 IU(20 mg)と提案されましたが、 その後、1974年に15 IU(10 mg)、2,000年に 22 IU (15 mg)と変更を繰り返しています。 しかし、15 IU あるいは 22 IU という値は、過去70年の研究成果から、妊婦に対しては致命的と言えます。 一方、日本の推奨量は、成人男性で 10 IU(7 mg)、成人女性で 9.7 IU(6.5 mg)と、かなり低い量に抑えられているのが現状です。
サプリメントは必要か? に示すとおり、分子整合栄養医学の最適健康必要量は、200 IU(134 mg)であり、日米の推奨量とは大幅に異なります。 推奨量がかなり少ない量に留まっているのは、ビタミンE が食物から取りにくい栄養素であることも一つの原因になっているでしょう。 しかし、このような低い推奨量が、現在の医療費を大幅に押し上げているのも事実です。
近年、日米共に不飽和脂肪酸(揚げた食物やファーストフードに多く含有)の消費量が増えています。 しかし、不飽和脂肪酸は、体内の活性酸素により酸化され、過酸化脂質へと変化し、 動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病などの病気を引き起こす原因となります。 ところが、十分なビタミンE を摂取することにより、不飽和脂肪酸の酸化を抑制することができます。 ファーストフードを好む人は、ビタミンE の量も増やさなければ、将来、命に影響を及ぼす重大な病気に陥る可能性があることを認識してください。
   この他にもビタミンE には以下のような多数の効果が確認されています (分子整合医学(Orthomolecular Medicine)関連[11])。

ビタミンE を多く含む食品

   ビタミンE を多く含む主な食品は、以下の通りです。 ここで、表示した重量(mg)は、食材 100 g 当たりのビタミンE の含有量ですが、 特に明記していない場合は、α-トコフェロールの含有量を示しています (食品成分表:分子整合医学(Orthomolecular Medicine)関連[3])。

ビタミンE の副作用

   ビタミンE には抗凝血作用がありますので、抗凝血剤(anticoagulation)を服用されている人は、医師に相談してください。 抗凝血剤(anticoagulation)の服用量を減らせるはずです。
ビタミンE のサプリメント摂取を批判した論文は殆どなく、米国で権威のある Institute of Medicine(The National Academy Sciences)も、 ビタミンE の上限を、1,490IU(1,000mg)としており、 それ以下の摂取においては、殆どの全ての人に対して健康へのリスクはないとしています。
   これに反し、2005年、E. R. Miller らは、欧米や中国などの医療機関におけるビタミンE を使用した135,967人の治療事例を基に、統計的な解析を行い、 『ビタミンE サプリメントの 400 IU/日以上の多量摂取は全ての原因における死亡率を高めるかも知れないので中止するべき』 という結論を導きました (分子整合医学(Orthomolecular Medicine)関連[9])。 この結論は、サプリメント好きの米国人だけではなく、 過去の研究成果をベースに410~420 IU/日程度のビタミンE を摂取している私にも衝撃を与えました。 しかし、論文を読んで、私は、この結論に大きな疑問を持っています。
論文は、様々な医療機関で実施されたビタミンE の大量療法患者を対象にしたメタ解析であり、 ビタミンE の量と死亡率との関係しか解析の対象になっていません。 医療機関で大量のビタミンE を投与される患者は、それだけビタミンE の欠乏が顕著であり、 慢性の心臓病、腎臓障害、白内障あるいはパーキンソン病患者などが進行した患者と言えるでしょう。 このため、統計解析をするまでもなく死亡率が高く出るのは当然の結果であり、 このような統計解析のみで結論を導くのはあまりにも乱暴な手法と言わざるを得ません。
   私は、この論文を知った後も、引き続き410~420 IU/日程度のビタミンE を摂取していますが、 少しづつ健康体に近づいているような感触を得ています。
   その後、上記論文の結論を覆す研究として、 M. E. Wright らは、 『正常範囲にあるα-トコフェロール(ビタミンE)の血中濃度が高いほど、年配の男性喫煙者の死亡率のリスクが著しく低くなる』ことを明らかにしました (分子整合医学(Orthomolecular Medicine)関連[10])。


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