ビタミンA の概要

   ビタミンA は、健康な粘膜を作り、免疫機能を強化し、各種の癌を予防するためには欠かせない栄養素であることが知られています。 その反面、脂溶性であり体に蓄積されますので、 摂取しすぎると、皮膚のかゆみ、筋肉の硬直、あるいは神経系の変化などの症状を起こすこともある栄養素です。
ビタミンA には、レチノール(Retinol)、カロテン(Carotenes)、β-クリプトキサンチン(Cryptoxanthin)があります。 レチノールは主に、肉類・魚類の肝臓、卵黄あるいは乳製品に多く含まれています。 また、黄色、オレンジ、あるいは緑の野菜はβ-カロテンを含み、 柑橘類はβ-クリプトキサンチン(Cryptoxanthin)を含む食品が多いようです。
   ビタミンA は脂溶性であり、肝臓の中に蓄積され、リポタンパク質(Lipoprotein)として輸送されます。 体の中のビタミンA の 約50% はカロテンとして脂肪の中に蓄積されています。脂肪の黄色はカロテンの色です。 ビタミンA は、酸化されやすい栄養素です。 このため、ビタミンE のような抗酸化作用のある物質により保護する必要があります。

ビタミンA の単位

   ビタミンA の中では、人に対してレチノールが最も強い活性を持っており、1 μg (マイクログラム:mg の1/1,000)が 3.33 IU(International Unit:国際単位)に相当します。 ここで、 IU とは、薬理学の国際単位で、物質が人体に対してどの程度活性かを表す指標です。 また、カロテンやβ-クリプトキサンチンも、 レチノールと等価な効果をもつレチノール当量(μgRE: Retinol Activity Equivalent)に換算して表すことにより、 ビタミンA としての効果が明確になります。
レチノール当量(μgRE)= レチノール(μg) + β-カロテン(μg)/12 + α-カロテン(μg)/24 + β-クリプトキサンチン(μg)/24
カロテンやクリプトキサンチンは、ビタミンA の機能としては、かなり割り引かれるということを考慮する必要があります。 この式で計算したレチノール当量 1μgRE が 3.33 IU に相当するということになります。

ビタミンA の効果

   ビタミンA は、粘膜の形成には不可欠な栄養素ですので、不足すると、粘液の分泌が減少し、風邪などに感染しやすくなります。 この反面、十分なビタミンA を摂取していると、例え風邪にかかったとしても、ひどくなることはなく、短期間で回復します。
また、ビタミンA は、皮膚細胞の分化を促進しますので、健康的な肌の維持、妊娠線や湿疹の予防、 あるいは傷の早期治癒に効果を発揮します。 さらに、呼吸器系膜(Respiratory Membranes)、 消化管(Gastrointestinal Tract)、あるいは尿生殖器管(Genitourinary Tract)の健康にも欠かせない栄養素です。
β-カロテンおよび合成ビタミンA は、様々な抗癌作用も示します。 ビタミンA の血中濃度が低い人は、癌にかかりやすいことも知られています。 ビタミンA は腫瘍の生成および成長を抑制し、退化させる効果があります。 特に、いくつかの合成ビタミンA は、腫瘍の予防効果と治療効果が高いことが知られています。
   ビタミンA は、目の網膜で明暗や色を感じる視細胞で重要な働きをします。 視細胞には、ロドプシン(Rhodopsin)という色素をもつ 杆体かんたい細胞と、 アイオドプシン(Iodopsin)という色素をもつ 錐体すいたい細胞とがあります。 杆体細胞は暗所における視覚に関与し、錐体細胞は明るい場所における色覚に関係しています。 ビタミンA は、ロドプシンおよびアイオドプシンの両方で重要な働きをしていますので、 ビタミンA が欠乏すると、眼病変(Eye Lesions)、夜盲症(Night Blindness)、眼球乾燥症(Xerophthalmia)、 あるいは角膜軟化症(Keratomalacia)等に陥る可能性があります。 角膜軟化症は、角膜が乾燥・変性し、ひどくなると角膜に穴が明き失明に至ることもあります。

ビタミンA を多く含む食品

   ビタミンA を多く含む主な食品は、以下の通りです。 (食品成分表:分子整合医学(Orthomolecular Medicine)関連[3])。 ここで、ビタミンA としての効果に統一するため、レチノール当量(μgRE)で表示します。 上述の通り、3.33 倍することにより国際単位(IU)に換算できます。

レチノールを多く含む食品

カロテンを多く含む主な食品

β-クリプトキサンチンを多く含む主な食品



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